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  中原信達特許事務所 > 知的財産関連資料 > 審査指南改訂(抄訳) > 第4章 創造性


第4章  創造性

1. 序言
    特許法第22条第1項の規定に基づき、特許権が付与される発明および実用新案は、新規性、創造性及び実用性を備えていなければならない。因って、特許出願する発明および実用新案が創造性を備えていることは、特許権が与えられる要件の一つである。

2. 発明の創造性の概念
    発明の創造性とは、出願日前の従来の技術と比べ、発明に突出した実質的特徴と顕著な進歩があることを指す。

2.1 従来の技術
    特許法実施細則第30条の規定に基づき、特許法第22条第3項の従来の技術とは、第2部第3章2.1に定義される先行技術を指す。
    特許法第22条第2項の出願日前に他人より特許庁に出願され、且つ出願日以降に公開された特許出願書類の内容は先行技術に属さないため、発明の創造性を評価するとき考慮しない。

2.2 突出した実質的特徴
    発明に突出した実質的特徴があるとは、所属技術分野の技術者にとって、先行技術に比べ、発明は容易ではないことを指す。所属技術分野の技術者が先行技術を基に論理に合う分析、推理又は限られた試験のみによって得られる発明は、容易であり、つまり、突出した実質的特徴を具備しない。

2.3 顕著な進歩
    発明に顕著な進歩があるとは、先行技術に比べ、発明は有益な技術効果を挙げられることを指す。例えば、発明は先行技術に存在する欠点や不足を克服している、又はある技術問題を解決するために異なる構想の技術方案を提供している、又はある新しい技術発展の形勢を代表している。

2.4 所属技術分野の技術者
    発明が創造性を具備しているかどうかは、所属技術分野の技術者の知識と能力に基づいて評価しなければならない。所属技術分野の技術者は当業者と称することもでき、ある仮定の「人」を指し、出願日又は優先権日前の発明が属する技術分野の全ての一般的技術知識を知っていて、その分野の全ての先行技術を知り得ることができるとともに、その出願日又は優先権日前の慣用の実験手段を応用する能力を有しているが、創造能力は有していない人と仮定する。もし解決しようとする技術問題が、他の技術分野から技術手段を探すよう当業者を仕向けることができる場合、その人はその技術分野からもその出願日又は優先権日前の関連の先行技術、一般的技術知識、慣用の実験手段を知り得る能力を有しているとされる。
    この概念を設定する目的は、審査基準を統一させ、審査官の主観的要素の影響を極力避けることにある。

3. 発明の創造性の審査
    一件の発明特許出願が創造性を具備するか否かは、その発明が新規性を備えている条件の下、考慮される。

3.1 審査原則
    特許法第22条第3項の規定に基づき、発明が創造性を具備しているか否かを審査するとき、発明は突出した実質的特徴を有しているか否かを審査するとともに、発明は顕著な進歩を有しているか否かを審査しなければならない。
    発明が創造性を具備しているか否かを評価するとき、審査官は発明の技術方案自体だけでなく、発明が属する技術分野、解決しようとする技術問題、得られる技術効果も考慮し、発明を一つの全体として見なければならない。
    新規性の「単独比較」の審査原則(第2部第3章3.1参照)と異なり、創造性を審査するときは、一つ又は複数の先行技術の異なる技術内容を一緒に組み合わせて保護を要求する発明を評価する。
    一つの独立クレームが創造性を具備する場合、その独立クレームの従属クレームの創造性は審査しない。

3.2 審査基準
    発明が創造性を具備するか否かの評価は、特許法第22条第3項を基準としなければならない。この基準を正しく把握しやすいように、以下に突出した実質的特徴の一般的な判断方法と顕著な進歩の判断基準をそれぞれ示す。

3.2.1 突出した実質的特徴の判断
    発明が突出した実質的特徴を有するか否かを判断するというのは、当業者にとって、保護を要求する発明が先行技術に比べ容易であるか否かを判断することである。
    保護を要求する発明が先行技術に比べ容易である場合、突出した実質的特徴はない。逆に、比較した結果が保護を要求する発明は先行技術に比べ容易ではないことを表す場合、突出した実質的な特徴を有する。

3.2.1.1 判断方法
    保護を要求する発明が先行技術に比べ容易であるか否かを判断するには、通常以下の三つの順序に基づき行う。
    (1)最も近い先行技術を確定する
    最も近い先行技術とは、先行技術において保護を要求する発明と最も密接に関係する一つの技術方案を指し、これは発明が突出した実質的特徴を有するか否かの判断基礎である。最も近い先行技術は、例えば、保護を要求する発明と技術分野が同じであり、解決しようとする技術問題、技術効果又は用途が最も近く、及び/又は発明の技術的特徴を最も多く開示している先行技術、又は保護を要求する発明と技術分野は違うが、発明の機能を実現でき、且つ発明の技術的特徴を最も多く開示している先行技術とすることができる。注意すべきことは、最も近い先行技術を確定するとき、先ず、技術分野が同じ又は近い先行技術を考慮することである。
    (2)発明の区別特徴と発明が実際に解決する技術問題を確定する
    審査において、発明が実際に解決する技術問題を客観的に分析し確定しなければならない。このために、先ず保護を要求する発明を最も近い先行技術と比べ、どんな区別特徴があるかを分析し、それからこの区別特徴が達成できる技術効果に基づき発明が実際に解決する技術問題を確定しなければならない。この意味から言えば、発明が実際に解決する技術問題とは、より良好な技術効果を得るために最も近い先行技術に対し改良を行う必要がある技術的任務を指す。
    審査の過程で、審査官が認定する最も近い先行技術は、出願人が明細書で説明している先行技術とは異なる可能性もあるため、最も近い先行技術に基づき再度確定した発明が実際に解決する技術問題は、明細書で説明している技術問題と異なる可能性がある。この場合、審査官が認定した最も近い先行技術に基づき発明が実際に解決する技術問題を再度確定しなければならない。
    再度確定した技術問題はおそらく各項の発明の具体的な状況により定める必要がある。原則として、発明の如何なる技術効果も再度確定した技術問題の基礎となることができ、当業者がその出願の明細書の記載内容からその技術効果を得られればよい。
    (3)保護を要求する発明が当業者にとって容易であるか否かを判断する
    ここでは、最も近い先行技術と発明が実際に解決する技術問題から出発し、保護を要求する発明は当業者にとって容易であるか否かを判断する。判断の過程で確定することは、先行技術の全体においてある種の技術的示唆が存在するか否か、すなわち、先行技術の中に、上記区別特徴をその最も近い先行技術に応用してそこに存在する技術問題(即ち発明が実際に解決する技術問題)を解決させる示唆が示されているかどうかである。このような示唆は当業者がその技術問題に直面したとき、その最も近い先行技術を改良して保護を要求する発明を得るという動機を持たせるものである。もし先行技術にこのような技術的示唆が存在する場合、発明は容易であり、突出した実質的な特徴はない。
    下記の状況は通常、先行技術に上記の技術的示唆が存在すると考えられる状況である。
    (@)上記区別特徴は公知常識である。例えば、当分野において、その再度確定された技術問題を解決する慣用手段は教科書又は工具書などに開示されているその再度確定された技術問題を解決する技術手段である。
【例】
    保護を要求する発明は「アルミニウムを用いて製造される建築部材」であり、解決しようとする技術問題は建築部材の重量を軽減することである。ある引用文献は同じ建築部材を開示しているとともに、建築部材は軽質材料であると説明しているが、アルミニウム材を用いるとは言っていない。建築標準において、アルミニウムは軽質材料としてすでに明示されており、建築部材とすることができる。この保護を要求する発明は、アルミニウム材が軽質であるという公知の性質を明らかに応用している。因って、先行技術には上記技術的示唆が存在すると考えられる。
    (A)上記区別特徴は最も近い先行技術と関連する技術手段である。例えば、同一の引用文献のその他の部分に開示された技術手段であり、この技術手段が該その他の部分で起こす作用と、その区別特徴が保護を要求する発明の中でその再度確定された技術問題を解決するために起こす作用は同じである。
【例】
    保護を要求する発明は「真空ボックスが全体的に漏れているかを検出する全体漏れ検出装置と、漏れたヘリウムガスを回収する回収装置と、サクションガンを有する、具体的に漏れた箇所を検出するヘリウム質量分析漏れ検知器とを備えるヘリウムガス漏れ検出装置」である。
    引用文献1のある部分は「真空ボックスが全体的に漏れているかを検出する全体漏れ検出装置と、漏れたヘリウムガスを回収する回収装置とを備える全自動ヘリウムガス漏れ検出システム」を開示している。この引用文献1の別の部分は「サクションガンを備えるヘリウムガス漏洩箇所検出装置」を開示しており、この漏洩箇所検出装置は具体的に漏れた箇所を検出するヘリウムリークディテクターでもよいと明示している。この部分に記載されたヘリウムリークディテクターと保護を要求する発明のヘリウムリークディテクターの作用は同じである。引用文献1の別の部分の教示に基づき、当業者は容易に引用文献1の二つの技術方案を組み合わせて本発明の技術方案とすることができる。因って、先行技術に上記技術的示唆が存在すると考えられる。
    (B)前記区別特徴はもう一つ別の引用文献に開示されている関連の技術手段である。この技術手段がこの引用文献で起こす作用と、その区別特徴が保護を要求する発明の中でその再度確定された技術問題を解決するために起こす作用は同じである。
【例】
    保護を要求する発明は「ブレーキ表面を清浄するために使用する水を排出するための排水溝を設けたグラファイトディスクブレーキ」である。発明が解決しようとする技術問題は、摩擦によって発生する制動を妨げるブレーキ表面のグラファイト屑をどのように清浄するかである。引用文献1は「グラファイトディスクブレーキ」を記載している。引用文献2は「金属ディスクブレーキに設けた該ブレーキ表面に付着した埃を洗い流すために使用する排水溝」を開示している。
    保護を要求する発明と引用文献1の区別は、この発明がグラファイトブレーキの表面に凹溝を設けていることであるが、この区別特徴は引用文献2に開示されている。引用文献1のグラファイトディスクブレーキは摩擦によってブレーキ表面に屑が発生し、制動が妨げられる。引用文献2の金属ディスクブレーキは表面に埃が付着することによって制動が妨げられる。制動妨げの技術問題を解決するために、前者は屑を取り除き、後者は埃を取り除く必要がある。これは性質が同じ技術問題である。グラファイトディスクブレーキの制動問題を解決するために、当業者は引用文献2の示唆に基づき水で洗い流すこと、そして凹状溝をグラファイトディスクブレーキに設け、屑を洗い流した水を凹溝から排出することを容易に想到できる。引用文献2の凹状溝の作用と発明が保護を要求する技術方案の凹状溝の作用は同じであるため、当業者には引用文献1と引用文献2を組み合わせることでこの発明の技術方案を得るという動機がある。因って、先行技術に上記技術的示唆が存在すると考えられる。

3.2.1.2 判断の例示
    特許出願するクレームは、「耐熱ニッケル基合金Aからなる主体と、バルブヘッドとを備える改良された内燃機関排気バルブであって、前記バルブヘッドはニッケル基合金Bからなる被覆層がコーティングされていることを特徴とする内燃機関排気バルブ」である。発明が解決しようとする技術問題はヘッドの耐腐蝕、耐高温である。
    引用文献1は「主体と、バルブヘッドとを備える改良された内燃機関排気バルブであって、前記主体は耐熱ニッケル基合金Aからなり、前記バルブヘッドの被覆層には主体とは異なる別の合金が使用されていることを特徴とする内燃機関排気バルブ」を開示している。そして引用文献1は高温及び腐蝕環境に適応するために、前記被覆層には耐高温及び耐腐蝕特性を有する合金を選ぶことができると更に示している。
    引用文献2はニッケル基合金材料の技術内容を開示している。そしてニッケル基合金Bはひどい腐食性環境と高温の影響に対し優れた耐性を有し、このようなニッケル合金Bは発動機の排気バルブに使用できると示している。
    二つの引用文献のうち、引用文献1は特許出願の技術分野と同じであり、解決しようとする問題も同じであり、そして特許出願の技術的特徴を最も多く開示している。因って、引用文献1は最も近い先行技術であると考えられる。
    特許出願のクレームと引用文献1を比べると分かるように、発明が保護を要求する技術方案と引用文献1の区別は、発明が高温と腐蝕性環境により良く適応できるよう、バルブヘッドの被覆層をニッケル基合金Bと具体的に材料を限定している点である。このため、発明が実際に解決する技術問題は、発動機の排気バルブをどのようにしてもっと高温や腐蝕性の作業環境に適応させるかであると分かる。
    引用文献2に基づき、当業者はニッケル基合金Bを発動機の排気バルブに適用し、耐腐蝕性や耐高温性を向上させる作用を起こすことができると明確に知ることができる。これは、この合金がその発明の中で起こす作用と同じである。したがって、引用文献2はニッケル基合金Bを耐腐蝕及び耐高温に要されるバルブヘッドの被覆層として用いるという技術的示唆を示し、そして引用文献2と引用文献1を組み合わせその特許出願のクレームの技術方案を構成させる動機を当業者に持たせたと考えられる。因って、その特許出願が保護を要求する技術方案は先行技術に比べ容易である。

3.2.2 顕著な進歩の判断
    発明が顕著な進歩を有するか否かを評価するとき、発明は有益な技術効果を有しているか否かを主に考慮しなければならない。以下の状況は通常、発明に有益な効果があり、顕著な進歩を有すると考えられる状況である。
    (1)発明は先行技術に比べ、より良好な技術効果を有している。例えば、質的な改善、生産量の向上、エネルギーの節約、環境汚染の防止と処置など。
    (2)発明は技術構想が違う技術方案を提供しており、その技術効果は先行技術の水準にほぼ達している。
    (3)発明はある新しい技術発展の形勢を代表している。
    (4)発明はある面においてマイナスの効果を有しているが、他の面では明らかな積極的な技術効果を有している。

4. 異なる類型の発明の創造性判断
    注意すべきことは、本節における発明類型の区分は、主に発明と最も近い先行技術との区別特徴という点に基づき区分したもので、参考的なものにすぎない。審査官は出願案件を審査するとき、無理に適用することはせずに、各項の発明の具体的な状況に基づいて客観的に判断しなければならない。
    異なる類型の発明の創造性判断について以下に例を挙げて説明する。

4.1 開拓的な発明
    開拓的な発明とは、全てが新しい技術方案を指す。技術史上かつて例がなく、ある時期の人類科学技術の発展に新紀元を開かせる技術方案。
    開拓的な発明は先行技術に比べ、突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。例えば、中国の四大発明―羅針盤、製紙技術、活字印刷技術、火薬。また、蒸気機関、白熱灯、ラジオ、レーダー、レーザー、コンピュータを利用した漢字入力など。

4.2 組み合わせ発明
    組み合わせ発明とは、先行技術に客観的に存在する技術問題を解決するために、幾つかの技術方案を組み合わせて一つの新しい技術方案を構成している発明を指す。
    組み合わせ発明の創造性を判断するとき、通常、組み合わせた後の各技術的特徴は機能的に互いに支持し合っているか否か、組み合わせの難易度、先行技術に組み合わせの示唆が存在しているか否か、組み合わせた後の技術効果などを考慮する必要がある。
    (1)容易な組み合わせ
    保護を要求する発明は、幾つかの既知の製品又は方法を組み合わせ又はつなぎ合わせただけで、各々は慣用の方式で作動し、且つ総括的な技術効果はそれぞれ組み合わせた部分の効果の総和であり、組み合わせた後の各技術的特徴同士は機能的に互いに作用する関係を持たない簡単な重ね合わせにすぎない場合、このような組み合わせ発明は創造性を具備しない。
【例】
    電子時計を有したボールペンの発明。発明の内容は既知の電子時計を既知のボールペンの本体に取り付けたもの。電子時計とボールペンを組み合わせた後、両者はそれぞれ慣用の方式で作動し、機能的に相互に作用する関係はない。単なる簡単な重ね合わせにすぎないため、このような組み合わせ発明は創造性を具備しない。
    また、組み合わせが公知構造の変形に過ぎない、又は組み合わせが慣用技術の継続的発展の範囲内にあり、予測できない技術効果を得ていない場合、このような組み合わせ発明は創造性を具備しない。
    (2)容易ではない組み合わせ
    組み合わせた各技術的特徴が機能的に互いに支持し合い、新しい技術効果を得ている場合、又は組み合わせた後の技術効果は個々の技術特徴の効果の総和よりも更に優れている場合、このような組み合わせ発明は突出した実質的な特徴と顕著な進歩があり、発明は創造性を具備する。組み合わせ発明の個々の単独の技術的特徴自体が完全に又は部分的に既知であるか否かはその発明創造の評価に影響しない。
【例】
    「深冷処理及び化学めっきニッケル-リン-希土工程」の発明である。発明の内容は公知の深冷処理と化学めっきを互いに組み合わせたもの。先行技術は深冷処理の後、部品を非慣用の温度で焼き戻し処理して応力を除き、組織と性能を安定させる必要があった。本発明は深冷処理の後、部品の焼き戻し又は経時処理は行わず、80℃±10℃のめっき液中で化学めっきを行う。これは焼き戻しや経時処理を省略できるほか、部品に依然安定した基体組織と耐磨性、耐蝕性ならびに基体との結合が良好なめっき層を備えさせる。このような組み合わせ発明の技術効果は、当業者にとって事前に予測し難いため、この発明は創造性を具備する。

4.3 選択発明
    選択発明とは、先行技術に開示されている広い範囲の中から、目的を持って先行技術で言及していない狭い範囲又は個体を選び出した発明を指す。
    選択発明の創造性を判断するとき、選択によってもたらされた予測できない技術効果が考慮する主な要素となる。
    (1)発明が既知の幾つかの可能性の中から選択されただけ、又は発明が同じ可能性を有した幾つかの技術方案から一つ選択されただけで、選択された技術方案は予測できない効果を挙げていない場合、この発明は創造性を具備しない。
【例】
    先行技術には多くの加熱方法が存在している。発明は既知の加熱を採用した化学反応の中から一つの公知の電気加熱法を選択している。この選択発明は予測できない効果を挙げていないため、創造性を具備しない。
    (2)発明が、可能な、限られた範囲から具体的なサイズや温度範囲又はその他のパラメータを選択したものであって、これらの選択は当業者が慣用手段によって得られるもので、予測できない技術効果を挙げていない場合、創造性を具備しない。
【例】
    既知の反応方法の発明であって、不活性ガスの流速を規定したことを特徴としている。流速を確定することは当業者が慣例の計算によって得られるため、この発明は創造性を具備しない。
    (3)発明が先行技術の中から直接導き出せる選択である場合、この発明は創造性を具備しない。
【例】
    組成物Yの熱安定性を改良した発明であって、組成物Yの中のある成分Xの最低含量を確定したことを特徴としている。実際に、この含量は成分Xの含量と組成物Yの熱安定性の関係曲線から導きだせるため、この発明は創造性を具備しない。
    (4)選択によって発明が予測できない技術効果を挙げることができた場合、この発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
【例】
    クロロチオギ酸を製造する先行技術の引用文献において、原料メルカプタンに対する触媒カルボキシル酸アミド及び/又は尿素の用量比は、0より大きく、100%(mol)以下である。また、触媒の用量比は2%(mol)〜13%(mol)である例を挙げているとともに、触媒用量比は2%(mol)から収率が向上すると示されている。この他、一般専門技術者も収率を向上させるために触媒用量比を高める方法をよく採用している。クロロチオギ酸を製造する選択発明は小さい触媒用量比(0.02%(mol)〜0.2%(mol))を採用して収率を11.6%〜35.7%向上させ、予測の収率範囲を大きく超えたとともに、反応物の処理工程を簡略化した。これは、この発明が選択した技術方案は予測できない技術効果を挙げたことを説明しており、したがって、この発明は創造性を具備する。

4.4 転用発明
    転用発明とは、ある技術分野の先行技術を別の技術分野に転用した発明を指す。
    転用発明の創造性を判断するとき、通常、転用の技術分野は離れているか近いか、対応の技術的示唆が存在するか否か、転用の難易度、技術上の困難を克服する必要があるかないか、転用がもたらした技術効果などを考慮する必要がある。
    (1)転用が類似の又は近い技術分野の間で行われ、且つ予測できない効果を挙げていない場合、この転用発明は創造性を具備しない。
【例】
    戸棚の支持構造をテーブルの支持構造に転用したような転用発明は創造性を具備しない。
    (2)このような転用発明が、もし予測できない技術効果を挙げることができる場合、又は元の技術分野でかつて遭遇したことのないような困難を克服している場合、この転用発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
【例】
    潜水艦補助翼の発明である。先行技術の潜水艦は潜水しているとき、自重と水の潜水艦に生じる浮力の平衡によって任意の点に留まっており、上昇するときは、水平舵を操縦して浮力を生じさせる。一方、飛行機は航行しているとき完全に主翼に生じる浮力によって空中に浮いている。発明は飛行機の技術手段を参考に、飛行機の主翼を潜水艦に用い、潜水艦に補助翼の作用を起こす可動プレートの作用のもと上昇浮力又は沈降力を発生させる。これによって潜水艦の昇降性能は大幅に改善された。空中技術を水中に運用するには多くの技術的難題を克服する必要があり、この発明は非常に優れた効果を達成しているため、この発明は創造性を具備する。

4.5 既知製品の新しい用途発明
    既知製品の新しい用途発明とは、既知製品を新しい目的に用いた発明を指す。
    既知製品の新しい用途発明の創造性を判断するとき、通常、新しい用途と従来用途の技術分野が離れているか近いか、新しい用途がもたらした技術効果などを考慮する必要がある。
    (1)新しい用途が既知材料の既知性質を利用しただけである場合、その用途発明は創造性を具備しない。
【例】
    潤滑油として既に知られる組成物を同一の技術分野に切削剤として用いたような用途発明は創造性を具備しない。
    (2)新しい用途が既知製品の新しく発見された性質を利用し、且つ予測できない技術効果を挙げている場合、このような用途発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
【例】
    木材殺菌剤としてのペンタクロロフェノール製剤を除草剤として用い、予測できない効果を挙げている用途発明は創造性を具備する。

4.6 要素変更発明
    要素変更発明には、要素関係変化発明、要素代替発明、要素省略発明が含まれる。
    要素変更発明の創造性を判断するとき、通常、要素関係の変化、要素の代替と省略に技術的示唆が存在しているか否か、その技術効果は予測できるか否かなどを考慮する必要がある。

4.6.1 要素関係変化発明
    要素関係変化発明とは、先行技術と比べ、発明の形状、サイズ、比例、位置及び作用関係などに変化が起こったものを指す。
    (1)要素関係の変化が発明効果、機能及び用途の変化に至っていない、又は発明効果、機能及び用途の変化は予測可能である発明は創造性を具備しない。
【例】
    先行技術は目盛り盤が固定され、目盛り針が回転式である測量計器を開示している。発明は目盛り針が不動で、目盛り盤が回転する同類の測量計器である。この発明と先行技術の区別は要素関係の交換、すなわち、「動と静の転換」でしかない。このような転換は予測できない技術効果を挙げていないため、創造性を具備しない。
    (2)要素関係の変化が発明に予測できない技術効果をもたらしている場合、発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
    【例】
    草刈り機に関する発明であって、刃の傾斜角が公知と異なることを特徴としている。その傾斜角は刃の自動的研磨を保証することができる。一方、先行技術の刃の角度は自動的研磨の効果を有していない。この発明は要素関係の変化によって予測できない技術効果を挙げているため、創造性を具備する。

4.6.2 要素代替発明
    要素代替発明とは、既知の製品又は方法のある要素が他の既知の要素によって代替される発明を指す。
    (1)発明が同じ機能の既知手段の等価代替である、又は同一の技術問題を解決するために、既知の最新開発された同じ機能を有する材料によって公知製品の対応の材料を代替している、又はある公知材料によって公知製品の中のある材料を代替しており、そして、このような公知材料の類似的応用は既知であり、且つ予測できない技術効果を挙げていない場合、この発明は創造性を具備しない。
【例】
    ポンプに関する発明であって、先行技術と比べ、この発明の動力源は先行技術で使用されている電動モータを液圧モータによって代替している。このような等価代替の発明は創造性を具備しない。
    (2)要素の代替が発明に予測できない技術効果をもたらす場合、その発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。

4.6.3 要素省略発明
    要素省略発明とは、既知の製品又は方法の中のある一つ又は複数の要素を省略した発明を指す。
    (1)発明が一つ又は複数の要素を省略した後、その機能も相応的に消える場合、この発明は創造性を具備しない。
【例】
    塗料組成物の発明であって、先行技術との区別は防凍剤を含んでいないことである。防凍剤の使用を取りやめた後、この塗料組成物の防凍効果も相応して消えた。因って、この発明は創造性を具備しない。
    (2)先行技術と比べ、発明は一つ又は複数の要素を省いた(例えば、一つの製品発明は一つ又は複数の部品を省いた、又は一つの方法発明は一つ又は複数の工程を省いた)後、元の機能を全て保ったまま、又は予測できない技術効果を得ている場合、突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。

5. 発明の創造性を判断するとき考慮する必要があるその他の要素
    発明が創造性を具備しているか否かは、通常、本章3.2の審査基準に基づいて審査しなければならない。強調すべきことは、出願が以下の状況に該当する場合、審査官はこれを考慮しなければならず、発明が創造性を具備しないという結論を安易に下してはならない。

5.1 発明は人々がずっと解決を渇望していたが始終成功が得られなかった技術的難題を解決した
    もし発明が人々がずっと解決を渇望していたが始終成功が得られなかった技術的難題を解決した場合、このような発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
【例】
    農場が存在して以来、人々はずっと家畜(乳牛など)の身体に痛みがなく、家畜の表皮を損ねないように永久的な印を打ち付ける技術問題の解決を渇望していたが、ある発明者が冷凍が家畜の表皮に着色できるという発見に基づき発明した冷凍「烙印」の方法はこの技術問題の解決に成功した。この発明は創造性を具備する。

5.2 発明は技術偏見を克服した
    技術偏見とは、ある期間内のある技術分野で、ある技術問題に対し普遍に存在している、技術者の偏った客観的事実の認識を指す。これは、人々にその他の方面の可能性について考えさせなくし、人々のその技術分野の研究と開発を妨げる。もし発明がこのような技術偏見を克服し、人々が技術偏見によって投げ出していた技術手段を採用することによって技術問題を解決できれば、このような発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。
【例】
    モータの整流子とブラシ間の界面に対して、通常は、滑らかであるほど接触が良く、電流消耗も少ないと考えられている。ある発明は整流子の表面に一定の粗さがある細い筋を付けた。その結果、電流消耗はもっと少なくなり、滑らかさに優れた表面となった。この発明は技術偏見を克服し、創造性を具備する。

5.3 発明は予測できない技術効果を挙げた
    発明は予測できない技術効果を挙げたとは、発明と先行技術を比べ、その発明の技術効果が「質」的変化を生じさせ、新しい性能を具備させた、又は「量」的変化を生じさせ、人々の予想をはるかに超えたことを指す。この「質」又は「量」の変化は、所属技術分野の技術者にとって事前に予測又は推理できない。発明が予測できない技術効果を挙げたとき、発明は顕著な進歩を有することを説明しているとともに、発明の技術方案は容易ではなく、突出的な実質的特徴を有することを反映しており、この発明は創造性を具備する。

5.4 発明は商業上で成功した
    発明の製品が商業上で成功したとき、この成功が発明の技術的特徴によって直接もたらされたものである場合、発明は有益な効果を有することを反映しているとともに、発明は容易でないことを説明している。このため、このような発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。しかし、商業上の成功が他の原因、例えば販売技術の改善又は宣伝公告によるものの場合、創造性の根拠として判断することはできない。

6 創造性を審査するとき注意しなければならない問題
    発明の創造性を審査するとき以下の問題に注意しなければならない。

6.1 発明のルートを立てる
    発明者の発明を生み出すまでの過程が苦労を尽くしたものであったか、又は非常に容易なものであったかに関わらず、その発明の創造性評価に影響してはならない。大多数の発明は発明者の創造的労力による結晶であり、長期科学研究又は生産実践の総括である。但し、一部の発明は偶然得られたものである。
【例】
    公知の自動車タイヤは良好な高度と耐磨性を有すが、これはかつてある職人が黒いゴム材料を配合しようとしたとき、3%添加するはずのカーボンブラックを誤って30%添加したことによって得られたものである。この事実は、30%のカーボンブラックを添加して得られたゴムは元来予測したことのなかった高い強度と耐磨性を有し、これは操作者による偶然の不注意によるものであっても、この発明は創造性を具備することに影響しないことを証明している。

6.2 「事後諸葛亮(下衆の後知恵)」を避ける
    発明の創造性を審査するとき、審査官は発明の内容を理解した上で判断を下すため、発明の創造性に対する見積もり評価が低めになり、「事後諸葛亮(下衆の後知恵)」の過ちを犯しやすい。主観的要素の影響を減らす又は避けるため、発明の創造性に対する評価は、発明が属する技術分野の技術者が出願日前の先行技術と発明を比較したことに基づき下すものであることを審査官はしっかりと覚えておかなければならない。

6.3 予測できない技術効果に対する考慮
    創造性を判断する過程で、発明の技術効果は発明の創造性を正しく評価するのに有利であることを考慮する。本章5.3で述べたように、先行技術と比べ、発明は予測できない技術的効果を有している場合、その技術方案に突出的な実質的特徴があるか否かを疑う必要はなく、発明は創造性を具備すると確定できる。しかし、注意すべきことは、もし本章3.2で述べた方法によって、発明の技術方案は当業者にとって容易ではなく、且つ有益な技術効果を挙げられると判断できる場合、発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備するが、この場合、発明が予測できない技術効果を有しているかどうかについて強調してはならない。

6.4 保護を要求する発明に対する審査
    発明が創造性を具備するか否かは、保護を要求する発明に対して言うのである。そのため、発明の創造性に対する評価は、クレームに限定された技術方案に対し行われなければならない。発明が先行技術に対して貢献する技術的特徴、例えば、発明に予測できない技術効果を挙げさせた技術的特徴、又は発明が技術偏見を克服したことを体現する技術的特徴は、クレームの中に書き込まなければならない。そうでなければ、明細書に記載があったとしても、発明の創造性を評価するときに考慮されない。また、創造性の判断はクレームに限定された技術方案全体に対し評価を行わなければならず、すなわち、技術方案が創造性を具備するか否かを評価するのであって、ある技術的特徴が創造性を具備するか否かを評価するのではない。

 
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